神羅万象へ愛を込めて。
20歳前後の男子なら、子供の頃お菓子売り場で見た事があるのではないだろうか。簡単に言ってしまえば、ビックリマンチョコのプラスチックカード版である。
こんなやつ。
どこか神話チックなイラストや、仏像と言った子供向けとは思えないモチーフが特徴だ。
裏面にはストーリーが断片的に記載され、集めるとどんなお話か見えてくる。かなり珍しい物語の媒体だと思う。
このシリーズは5年目で最盛期を迎え、以降細々と15年間続き、ついに今年完結を迎えた。今回は、このシリーズを15年間買い続けた思い出やエピソードをまとめてみようと思う。
最初に神羅万象に出会ったのは小学2年生の頃。お菓子売り場でカッコいい剣士のキャラクターに惹かれ、親に買ってもらった。
そんで当てたカードがコレ。
剣...士...?
まさかのBBAである。全然光ってないし。その時の「なんだ...コレ...?」感は今でも鮮明に思い出せる。凄い肩透かしだ。
が、良くみると裏面には「主人公の幼馴染みの女の子の母親だよ!」と書いてあった。惜しい!せめてその女の子なら...いや、この子も一応女の子だった。
が、この時のちょっとしたドキドキ感がクセになり、以降も買い続けた。
小学校の頃はまさに神羅万象というコンテンツの全盛期であり、学校で友達に布教しまくった。レアカードをこっそり学校に持ち込んで交換したり、自慢し合ったり。中学受験の時、塾に通いながら友達と運試しをしたのはいい思い出だ。売ってるコンビニを探し、9時の練馬を走り回っていた。いや早く帰りなさいよ。
早くから集めていた私はかなりレアカードを持っており、ちょっとした有名人だった。今にして思えば完全にスネ夫である。
僕のレアカード見せてやるよ。(cv.関智一)
ボケすぎた。ともかく、私にとって神羅万象とは友達と繋がるツールであり、初めて自分で持った「趣味」だったのだ。
そして中学生。思春期ど真ん中である。誰もがそうであるように、私も周囲との折り合いがつけられなかったりなんだりと辛い時期だった。
この頃になると周りに神羅万象を買う人は少なくなり、人気も下火になり始めていた。そしてこの神羅万象、ある問題があったのである。
肌色多ッ!
時々、やけにフェチっぽいカードが混ざっているのだ。(勿論それ目当ての時も多々あった)
が、その時自分は中学生。部活の後買って、友達の前でこんなカードを引いたら、次の日には間違いなくイジられる。また中学生のイジりはイジメと大差なかったりして。
この時から、神羅万象は私の中で「人に見せられ無い」趣味になっちゃった訳である。
高校に入ると、他に神羅万象を買ってる人は居なくなった。コンテンツもマイナーになり、明らかにレアカードの封入率が下がってきたりもした。流石にもう潮時か...
がなんと、10周年を記念してそれまでの人気キャラが全て登場する、オールスター感謝祭が始まったのだ。この時の私の盛り上がりが想像できるだろうか。死んだと思っていた親父がガンダムに乗って帰ってきたようなものである。伝わらねえ。
この時は年齢と共に高まった資金力を存分に投入し買いまくった。コンビニで箱ごと買って
「なんだ...コイツ...?」みたいな目でみられてもオールオッケー。それ以上に嬉しかったのだ。人知れず応援し続けた甲斐があった。最高の恩返しをもらった気分だった。
そこから5年は、様々な工夫がなされるものの、10周年の盛り上がりを超えることはできなかった。だが、それでも買い続けた。相変わらずキャラは魅力的だったし、イラストや光り方の技術も年々上がっていた。確かなこだわりを持って制作されている事は間違いなかった。
カッコいい、可愛い
それだけこのコンテンツの持つ独自性に魅了されていたんだろう。
そんな神羅万象が、今年遂に終わった。
最後を記念した特別本も発売され、いよいよ「もうあのチョコやカードには出会えないんだ...」という悲しさが襲ってくる。
だが、それ以上に感謝している。部屋にあるコレクションを見返せば、いつでも十代の思い出に浸れる。15年も続くコンテンツは稀だ。 それを15年買い続ける人も稀。
カードの裏に紡がれる、数多の物語。そしてその上に浮かぶ、自分の人生の物語。こんなに深く思い入れられるコンテンツに、人生であと何個出会えるのだろう。
ありがとう、神羅万象チョコ。