芝居に対して思う事と「アクタージュ」

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「アクタージュ」、毎巻楽しく読んでいる。

買ったのは去年の暮れだけど、もう5周は読んだだろうか。そのくらい面白い。

世の中、「役者」を主役にした作品は結構ある。でも、大体の作品にこう思ってた。

 

「なんか違うんだよなぁ...」

 

俺も高・大と7年演劇をやっていたんだけど。(まだやるかもしれないけど)そうすると周りには、本当にプロを目指す奴も出て来る。そういう奴らと、他の作品の中における「役者」に感じる隔たりというか、何というか。

 

主人公と恋愛する憧れの人。学校のスター。

ある日突然、何でもない自分がスカウトされてサクセスストーリー...みたいな。

 

何か違うな。役者って、こんなにキレイだったっけ?

 

俺自身、「プロの役者になるか?」と考えた事は、ある。でも5秒考えて、「いや、無理だな」とすぐに思ってきた。何故だろう?

 

何故なら、役者になろうなんて奴は、「皆狂ってる」からだ。

稼ぎはない、めちゃくちゃ不安定、精神も擦り減らす事になる。そんな世界に人生を賭ける奴らはまともじゃない。

 

アクタージュを「良い!」と思った一番のポイントが、ここをしっかり捉えていた事。

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この作品は、「役者」を誤魔化して描かない。社会に馴染めず、その他大勢になる事もできない。「役者」以外じゃ生きていけない人達。

役者になる動機は、決して綺麗な物ばかりじゃない。寧ろ過去のトラウマや、コンプレックスだったりして。

 

でも、舞台の上ならば。

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その描き方がとても良い。

 

 

 

 

 

 

 

上手く喋れない人が、舞台では口下手で不器用な男として客を虜にするのを見た事がある。

見るからに暗い雰囲気の人が、本番では「過去に傷を持った人」として説得力を放った。

外見に自身が無くとも、自分を肯定出来なくとも、今この瞬間だけは「他の誰か」。

ネガティブな事に価値を与えるのが、舞台という場所だと思うのだ。

 

 

 

 

 

 

わたしはこんな人じゃない。こんな自分でいたくない。

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流石にここまでヤベー奴は中々いないと思うけど!

 

主人公の夜凪景は、「過去の体験を呼び起こして感情を引き出す」事でしか社会に馴染めない少女。そんな少女が、演じる事を通して様々な人と出会い、変わっていく。

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絵も手伝って、「まさに別人」に見える演技。

 

勿論、他の役者達もピーキーなキャラ揃い。

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天使と呼ばれるトップ女優。

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天才肌のカメレオン俳優。

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業界に恐れられる舞台監督。

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唯我独尊のカリスマ俳優。

 

アクタージュにおける役者の定義は一つ。

「他の誰かになる」という、「異能を極める人達」だ。

そしてその裏にある、他じゃ絶対に味わえない快感。そこに魅せられた狂人達の、演技を通したぶつかり合い。

アクタージュは、「役者」という現実のお仕事を通して描かれる、「能力を使わない異能バトル」なのだ。

 

それが、あながち嘘でもない。現実の役者にも通じる...かは人によるけども。とにかく、そんなバランスが面白い漫画です。是非。